2011年9月1日

大阪時代(三十)

その月一杯迄勤務して退職した。もう後戻りは出来ないし、前に進むしかない。
さすがに馬鹿な私も腹くくりましたな。
で、早速翌日から職探し。新聞の求人欄でとにかく給料の高い会社、何が何でも稼げる会社はないか
なあと。 あったありましたネ。当時1万円位になっていた給料(まあ17、18の少年としては普通かな)
を軽く凌駕!
何と『努力次第で、5〜6万は当り前!一緒に文化を高めよう!!売れば売る程、収入大!』という文字。
ヨッシャ!ここや!と勇んでその会社へ。

「田浦半島から見た夕陽」


その会社、つまり世界百科事典を訪問販売で売り歩く会社。
いきなり大阪梅田からバスに乗せられて、京都へ連れて行かれて、何処かの住宅街で降ろされて、
「サァー売って来て下さい!頑張って!!」イヤ頑張ってって言われても、1時間半程バスの中で
レクチャー受けただけだし、何をドースリャいいのか。途方に暮れましたな。
まあ、しゃーないか!「ヨッシャッ!」ってんで、どんどん見ず知らずの家に入っていった。
40分程やったんだけれど、ドコの家もケンもホロロに追い返された。
当り前ですよネ!切羽詰った顔で十七、八の子供がクソ重たい事典を両手に持って、
「すみません、突然に。この事典は一家に必ず必要な物です!」って言われたって、
「あんた、頭オカシイのんと違う?」「何ンやのん!押売りはお断りやし!」
「若いねんから、もちょっとましな事せなアカンがな」「イヤ恐いわー、警察呼ぶよ!」

石倉三郎