2013年4月1日

東京で(四九)

予感はしてたけれど、何やネン、他にもっと云い方があるやろ!
「冷たい女め!」と腹の内で思ったけど
「すいません。何ンとか早めに出ますから。」
と云っても、さあ金はないし、次のアパートを探すったって、皆目見当もつかない。
すると奥サン、「ウチも慈善事業やってる訳じゃないのよ。まあ、仕方ないわ。
なるべく早く出て下さいな!」
「ハイ、判りました。ドーモスイマセンでした・・・。」
へへへ、世間、コレが世間ですヨネ~。
慈善事業ときたか、「ケッ!」今に見とれよ!!

「いい役者だねえ〜高畑淳子は」


とにかくWサンに言ったら、すぐに紹介してくれて、そのWサンの友達Aサンと
同じ夜間の店員になれた。
イヤ凄い処に来た。最中屋のオバハンの云った事は嘘じゃなかった。
入社したその日の夜、(夜専門だから)何とアノ大スター、石原裕次郎サンが
店に入ってくるではないか。
「ヒエー!!」夢か幻かっ!。て奴だ。
何ンでも、ユアーズの社長が友達で、店長が元太陽族メンバーだそうで、しょっちゅう裕次郎サンはいらっしゃるそうだ。イヤハヤこいつは楽しく良い処に入れたなあと、
嬉しくて仕方ない。給料もグンと上がって、いい事だからけ。
今でも思うけど人に呼ばれたら行け、きっと運が転がっている。
これは自分の中での鉄則だ。
けれどもさしあたっての重大事は今日の初日から給料日迄のお金。
まだ、半月程あるし、懐には5〜600円しかない。
店が退けて帰れるのは午前1時半過ぎ。
店の車で従業員一人一人送ってくれるのだが、新人だから一番最後になる。

石倉三郎