2014年11月1日

東京で(六八)

足が竦んでしまって、沸点に達してしまった感じでカットが掛かって、カメラ・照明他の移動中、俳優さん達の冗談とか活気に満ちた状況を見ていて、俺なんかがあの中に入って行けるんだろうかと、不安だらけになり、とてもじゃないが健サンに御挨拶なんぞ出来そうもないのだが、担当者の方に促されてドキドキしながら「あのう…健サン。三郎です。今日から入れる事になりました。宜しくその頑張ります。お願い申します。」必死の思いで喋った。
「あ、来たネ!宜しく。」「ハ・ハイ。」てな塩梅でした。
それで逃げるようにスタジオを出て、とにかく早く外に出たかったんですよ。
今考えてみても、健サンのシーンをずっと見てれば良いものを、何ですぐに出てしまったかねえ。

「男前には敵わないねえ〜」


ホントに何と云いますか、馬鹿に付ける薬は無いんですヨ。あーあーあー!!鳴々〜鳴々〜!!
それにしても喫茶店で会える健サンとスタジオの健サン。何もかも違う感じがしましてネー。
俺はもしかしたらとんでもない事、とんでもない世界に入ったかも知れないと。
焦りましたなあ。
それでも翌日、命がけで(コノ表現決してオーバーではなく)撮影所へ。
最初の記念すべき映画は、健サンの映画ではなく(少しガッカリ)女優サンが主演の映画で当時、東映も東宝も松竹も大映も日活も月に二本三本と撮っていて、凄く良い時代でしたな。
まあ、斜陽は斜陽でしたがネ。でも頑張ってましたよ。
勿論、健サンなんかは月に一本か二本、年間14、5本主演で演ってたんですから圧倒です。

石倉三郎