2018年3月1日

東京番外地(百八)

 その話をワタクシ聞いてしまったのですヨ。ケ!やっぱりなあ。そうだよムリなんだよ、こんな品の良い世界の人と、俺なんかが、合わせていける訳がない。「ヤッパリ、九サン、退めさせて頂きます」すると九サン「何云ってんだ、社長の云ったことは、気にするな。おマエはおマエのキャラクターでいいんだから」と。それから三年間、九サンとの楽しく温かい旅が終って、さてどうする?思っていると、「どうだサブ、オマエ俺のマネージャーをやる気ないか。いやお前が役者をめざしているのは知っている。けど十年程やってきて、どうだ?」そうなんだなあ、役者になるにはホントに遠い道だ。勿論、食える保証なぞ、ある訳がない。迷った。しかし、マネージャーになる自信なんてまるでないし、「九サン、有難うございます!一寸だけ考えさして下さい」と云って又、無職の日々に。そんな焦りの日に十日程も立ったのかなあ。コマ劇場時代の先輩役者から、「俺とコントやらねえか?」何コントだと!?コントかあ。二年前のミュージックホールを想い出した。結局色々考えたあげく、九サンには、「申し訳ないです。マネージャーは無理です。も一回コントにかけます!」と、「良し分った。サブ、頑張っていけよ!」涙涙でした。低い志で入った役者の道、役者は無理だったがコントなら。実はコントの方が、より難しいのだが。しかしモシモ一発当たれば……!もう考えるのはヤメタ!!やるしかない!ヤッタロー!じゃネーカ!!。又ここより地獄へ、参ります。又、皆様、御縁がありますれば、お会いしたいです。 (完)

石倉三郎