2015年7月1日

東京で(七六)

 そんなこんなで夜のバイトも行ける時は行って、真面目に勤めてまして、オフクロに送金すればホッと一息と、この状態は続いておりましたがね。
 東映三年目の冬、コノバイト先ユアーズには、毎年の冬に優秀社員賞というのがあり、選ばれると、ハワイに四泊六日行ける旅。ワタシの場合、一昨年、去年、今年と三年連続選ばれたのですヨ!いかに私めがキチンと真面目だったか、とにかく無断欠勤など一度もなく、大晦日、正月等のクソ忙しい時なぞ、自発的に出勤して、頑張ったものですヨ。
東映に入って一年目のハワイ、二年目のハワイは、健サンの番外地のロケと重なる(しかしコレは、重なるも何も運次第で、入るとは限らないし、演技事務員の裁量次第、)かもしれないし、平気でハワイを断れた。しかし、コノ三年目の時は流石に考えた。
担当事務員は横柄を絵に描いて額縁に入れたような奴。何時虫の居所が変わるか解らない。しかも俺は相性が悪い。
これは一ツまだ見ぬハワイへ行こうか、ハワイかあ、いつもの雪の北海道よりいいよなあ。北海道行っても何処に出てるか(映っているか)解らないしなあ。

「安心の3ショット!」


寝ずに考えて出した答えは北海道。
痩せても痩せても枯れても枯れても俗に云う痩せて枯れてもだ。
俳優目指してんだから一本道は北海道だろう!!
 己に勝てた!
それでハワイを断った時、社長が云った。
「おまえは面白い奴だなあ。そんなに役者になりたいか?俺も芸能界に友達は山程いるがハワイやめてエキストラの方を取る奴なんて始めて見たな。」

石倉三郎